視覚に障害のある人との言葉による美術鑑賞ハンドブック

百聞一見をしのぐ!?」

 

レポート

全国6都市での

「言葉による美術鑑賞ワークショップ」

 エイブル・アート・ジャパンでは、視覚に障害のある人とない人とが、言葉で美術鑑賞をするワークショップを全国6都市(札幌・仙台・静岡・富山・神戸・福岡)で実施した。一般的にはイメージしにくいこの活動を、より多くの人に知ってもらい、鑑賞の幅が広がることを目的とした。

 このワークショップがきっかけとなって、継続的な鑑賞活動がスタートした地域や、美術館のプログラムに発展しそうな動きもみられる。こうした新しい試みを、より多くの人と共有し、それぞれの街で新しい鑑賞方法の模索がはじまることの一歩になればと願っている。ここでは各地でのワークショップの概要をレポートする。

 実施にあたっては、各地の美術館や市民グループがパートナーとなって、参加者の募集をはじめ、ワークショップの運営を担った。

 ワークショップの概要

1 スケジュールとプログラムの概略を説明

2 参加メンバーの自己紹介

3 言葉で鑑賞することについての概略やイメージを紹介

  *見える人、見えない人それぞれの立場からのヒントやコツの紹介

  *ニーズに応じてデモンストレーションを実施

4 グループ分け:1グループ=視覚障害者1名と晴眼者2名+α

5 グループごとの自己紹介

6 グループごとに言葉による鑑賞の実施

7 共有の時間:全体でワークショップについての感想・意見交換、質疑応答

実施時間:3時間〜4時間

各地レポート(開催日順)

 仙台

実施日:2004年11月21日(日)

会場:せんだいメディアテーク

展覧会:せんだいアートアニュアル2004

協力:片桐未貴さん(せんだいメディアテーク サービス担当)

参加者:視覚障害者3名/晴眼者5名/MARメンバー4名/事務局2名

 

 館内は完全バリアフリーで視覚障害者へのサービスも充実。担当者の対応もよく、視覚に障害のある人への対応や呼びかけが適切であった。鑑賞した展覧会が公募展であったため、多様な作品が数多く展示され、何を見たいか焦点を絞りきれないまま終わってしまった。お互いに最初のコミュニケーションの重要性を実感。館としては、この取り組みに興味をもつ晴眼者へのアプローチが今後の課題と考えている。

 富山

実施日:2004年12月 4 日(土)

会場:富山県立近代美術館

展覧会:常設展示

協力:渡辺希利子さん(富山県立近代美術館 学芸員)

参加者:視覚障害者 3 名/晴眼者19名/MAR・ビューメンバー 5 名/事務局 1 名

 

 近代から現代の有名な作家の作品が順序よく展示され、よいリズムで作品を選んで見ていくことができた。どのグループも、視覚に障害のある人を中心に会話がふくらみ、お互いによく話した。感想や意見交換の時でも会話がとぎれず、終了後、皆のまわりの空気が熱くなっているような感じがした。その後、独自で鑑賞会を実施。新しい取り組みが始まっている。

 神戸

実施日:2004年12月26日(日)

会場:神戸アートビレッジセンター・1Room

展覧会:アナログ紙ニケーション

協力:飯島秀司さん(読歩PROJECT実行委員会)、1Room

参加者:視覚障害者8名/晴眼者16名/MAR・ビューメンバー5名/事務局2名

 

 折り紙作品の展覧会の鑑賞と、実際に折り紙を折るワークショップの2本立てで実施した。空間に対して人数が多すぎ、ゆっくり鑑賞する余裕がなかった。折り紙の表現には見た目の約束事的な抽象化がなされるので、認識の違いや伝えることの難しさを実感。現在は、視覚に障害のある人とのワークショップ経験をもつ人が中心となってグループを設立し、新たな活動展開を模索中。

 静岡

実施日:2005年 1 月15日(土)

会場:静岡県立美術館

展覧会:収蔵品展 20世紀の美術 ―絵は音楽を夢見た

協力:アイボランティアネットワーク静岡、かたりべの会、ホシノマサハルさん

参加者:視覚障害者 8 名/晴眼者16名/MARメンバー4名/事務局1名

 

 今回参加した視覚に障害のある人は、美術鑑賞は初めてだが地域で活発に活動している人たちでモチベーションが高く、鑑賞前から積極的に質問や意見が飛び交った。展覧会は、広さと作品数がちょうどよく、ゆっくり楽しめた。最初に叩いて音の出る作品があったのは、コミュニケーションのきっかけとして効果的だった。芸術関係の学生は、作品から新しい発見をするたびに驚きを表していた。参加者が中心になって次の展開に向けて動き出している。

 福岡

実施日:2005年 2 月 6 日(日)

会場:福岡市美術館

展覧会:常設展

協力:森重亜希子さん、松尾さちさん、福岡市美術館

参加者:視覚障害者2名/晴眼者8名/MARメンバー4名/事務局1名

 

 言葉による鑑賞を経験している人が参加していたので、視覚に障害のある人とのコミュニケーションが自然で、随所に感受性のよさが出て、心地よい鑑賞を導いた。柱状のオブジェが林立する間を歩いた時の、全身で受ける感覚から自然にわき出る言葉のやりとりでは、全員が感覚の言葉に満足感を味わった。 鑑賞後の意見交換では、活動を続けていく上での課題や悩みなど、かなり具体的な内容にまで話が及んだ。

 札幌

実施日:2005年 2 月25日(金)

会場:北海道立近代美術館

展覧会:コレクション・カフェ―スプーン一杯の想像力とともに

協力:柴 勤さん(北海道立近代美術館 学芸第二課長)

参加者:視覚障害者9名/晴眼者25名/MARメンバー4名/事務局1名

 参加者は、視覚に障害のある人とない人が一緒にさまざまな活動をしているグループのメンバーと、美術館ボランティアがほとんどだったが、役割を超えて共に作品に向かい、お互いの感性や想像をふくらませながら豊かな会話をつむぎ出していた。展示内容のよさも鑑賞の楽しさを随分引き出してくれた。多様なイメージが言葉で行き交う理想の美術館を実感できた。

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