例会を軸に着実な歩み
視覚に障害のある人と美術館に行って鑑賞するほかに、毎月第4木曜日午前10時30分から12時30分まで定例会を開いている。メンバーが集まって連絡や打ち合わせを行い、プログラムの計画や実行に向けての準備などをしている。
例会で行うことの一つに、「今月の美術館」というタイトルで美術館情報をテレホンサービスで流すための原稿をつくる作業がある。毎月交替で担当するメンバーが書いてきた原稿に、意見を出し合って3分間で読める原稿に仕上げる。完成した原稿はテレホンサービスのグループにまわして、音声情報として視覚障害者に提供される。その他、名古屋YWCAのホームページにも掲載されている。
こうした活動の他にも、メンバーは自発的にいろいろな美術館へ行って情報を集め続けてきた。その蓄積が2001年発行の『調べてきました美術館―目の不自由な方と訪れるために』につながった。これは東海地方を中心とした美術館の、視覚障害者への対応状況を調査したものである。2003年には改訂版が出されている。
また例会では、これも毎月持ち回りで自分の好きな作品を選んできて、図録などの写真を他の人には見せずに説明し、皆に聞いてもらう「絵画説明」の練習も行っている。聞き手はそれぞれ頭の中にイメージで絵を描いていきながらわかりにくい点を質問したり、感想を言ったりする。その場は堅苦しいものではなく、好きなことを言い合う。他のメンバーの説明方法を学ぶと同時に、未知の作家を知ることで視野を広げる意味もある。
視覚に障害のある人との鑑賞経験から、絵画説明の基本的な方法の開発が必要となり、『視覚に障害のある方を対象とした絵画説明の手引』を1998年に作成。これを読めば、一般の人も障害のある人と共に絵画鑑賞を楽しむことができる。翌年には、美術ガイドボランティア養成講座「ことばで描く絵画の世界」を開催。終了後、受講生の中からグループのメンバーになった人もいる。
絵画鑑賞の補助手段として立体コピーを利用することもある。1997年には助成金を受けて立体コピーの機械を購入した。これは、特殊な用紙を使って、熱を加えると黒色で描かれた線や面が膨らむ機械で、できあがった立体コピーを手でなぞると、触覚で絵の構図や形を知ることができる。立体コピーの下図は、美術館との共同プログラムの場合を除いて、メンバーが作品の選定、下図描き、コピーなど、すべての作業を行っている。
下図に添える作品名の点字もメンバーが書くために、メンバーは少なくとも点字が読めて書けるように、例会で時々視覚に障害のある人に教えてもらっている。最近は中途失明の人が多くなり、視覚に障害があっても点字が読めない人が増えているものの、ボランティアは、いろいろな意味で点字を知っていたほうがいいという気持ちからだ。
ロッカーには、いままでに作成した立体コピーがたくさん積み上げてある。作成の都度、視覚に障害のある人にアドバイスをしてもらい、どの線を残すか、面をどのようにあらわすか、工夫をしている。見えない人のために工夫を重ねた軌跡がよくわかり、グループの歴史を物語っている。
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