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(平成24年度完了事業)

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【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!

〈いつでも、どこでも、誰でも〉自由に豊かな文化的体験ができる環境づくりを目指して

2020年度、ミュージアムなどの文化施設と障害児者や支援者をオンラインでつなぎ、文化芸術への新しいアクセスを探る試み「アクセスアートプログラム・オンライン」試行事業を実施しました。
ここでは、第1段階で実施したオンライン勉強会と第2段階で実施したオンライン鑑賞会についてのレポートを掲載します。
2021年3月21日にはさらに詳しく、Zoomウェビナー形式で報告会を開催します。

詳しくはこちらのご案内をご覧ください。

事業の趣旨
 ミュージアムなどの文化施設は、障害のある人にとっても余暇の楽しみのひとつです。しかし、コロナ禍にあってこうした文化的で豊かな営みに直接参加することは困難な状況となっています。
 withコロナにおける新しいスタイルとして、オンラインによる文化的な学びの機会は急速に広がり、場所を問わず発信・参加・交流が可能となりましたが、一方で、障害のある人などをはじめ情報弱者とされる人たちの存在は見落とされがちです。
 そこで本事業では、ミュージアムのインクルーシブな取り組みのリサーチからスタートし、オンライン鑑賞プログラムのプランニング、オンラインを介した鑑賞プログラムの実施(試行)や可能性を探りました。

フェーズ1:勉強会
2020年10~11月には、第1段階としてオンライン勉強会を実施しました。
ここでは、ミュージアム関係者、障害当事者、研究者など10数名が参加し、インクルーシブなミュージアムの取り組み事例(対面・オンライン)や実践から得た気づき、障害当事者のオンライン鑑賞における課題などを共有、議論しました。
※敬称略

第1回:2020年10月19日
話題提供者:
・安曽潤子(あんそ・じゅんこ/インクルーシブミュージアム代表)
内容:
 世界のミュージアムのインクルーシブな取り組みに精通する安曽さんのお話は、インクルーシブのテーマは「障害」に限らず「人種」「民族」「移民」「ジェンダー」「LGBTQ」「貧困」「宗教」「カルチュラル・ミックス(コミュニティに新しく入ってきた人と古くからの人との混ざり合い)」「ジェネレーション・ミックス(世代を超えた混ざり合い)」など多岐にわたる、ということから始まりました。参加者全員が、そもそもの「インクルーシブ」という概念、考え方に改めて立ち返る時間となりました。

第2回:2020年11月2日
話題提供者:
・白木栄世(しらき・えいせ/森美術館)
・光島貴之(みつしま・たかゆき/美術家、視覚障害当事者)
内容:
 白木さんからは、オンラインプログラムに際しては予算や技術的なことだけでなく、著作権などの権利の問題も関わること、アーティストとの協働で何ができるのか模索しながら進めていることなど、実際に取り組む中で見えてきた迷い、課題を率直に共有していただいたことが印象的でした。
 光島さんは、オンライン鑑賞プログラムでのご自身の体験から「見えない人が積極的に聞きたいことを質問しないと、知りたいところが分からないまま終わってしまう」というデメリットがある一方「長時間、話しやすい」というメリットに触れ、このメリットを生かした「演劇などの映像を対話しながら鑑賞する」という新しい取り組みについて紹介してくださいました。

第3回:2020年11月9日
話題提供者:
・亀井幸子(かめい・さちこ/徳島県立近代美術館)
・竹内利夫(たけうち・としお/徳島県立近代美術館)
・高橋秀俊(たかはし・ひでとし/高知大学医学部)
内容:
 徳島県立近代美術館のお二人からは10年継続して取り組んでいる「ユニバーサルミュージアム」の取り組みについてご紹介いただきました。当事者の声から活動や協働が生まれること、ひとつの活動に違う活動が流れ込んでネットワークが広がり、新たな展開につながっていくことなど、継続しているからこその可能性の広がりが感じられる内容でした。
 発達障害の研究者である高橋さんからは、海外のミュージアムでは感覚過敏の人に向けた「センサリーフレンドリープログラム」が実施されていること、日本国内においても空港、スーパー、映画館、競技場などで少しずつ取り組みが始まっていることをご紹介いただきました。

第4回:2020年11月17日
話題提供者:
・柴崎由美子(しばさき・ゆみこ/エイブル・アート・ジャパン)
内容:
 新型コロナウイルスの影響で、芸術文化活動の場に参加できなくなった障害のある人たちが、自宅待機や外出制限の状況下でも創作活動が行えることをめざした「オンラインアトリエ」の実践、そこから見えた課題について報告しました。
 後半は全4回の勉強会の振り返りとして、小グループに分かれての意見交換の後、全体でオンラインプログラムに取り組む問題意識を共有しました。「オンラインの導入には、利用者だけでなくミュージアムにもインフラの問題がある」などの課題も出ましたが、「これまで見えていなかった利用者が、オンラインになったからこそ見えてきた」「コロナ禍限定でなく、その先も継続していくプログラムを作る」といった意見から、新たな可能性も感じられました。


フェーズ2:オンライン鑑賞会
2020年12月~2021年2月には、第1段階の勉強会メンバーであるミュージアム関係者と障害のある人や高齢者などが、3地域でプログラムを実施しました。
※敬称略

プログラム1:京都「見えない人と見える人が行うオンライン鑑賞」

 2021年2月28日、日曜日の夜7時、関東、関西を中心に15人がオンライン会議システムZoom上に集まりました。視覚に障害のある人6人、晴眼の人9人の計15人で、「見えない人と見える人が行うオンライン鑑賞」の参加者の方々です。
 このプログラムは、京都在住の美術家で視覚障害当事者でもある、光島貴之さんを中心に、光島さんが主宰する「アトリエみつしま」のスタッフ、アドバイザーとして森美術館のアソシエイト・ラーニング・キュレーター白木栄世さんが加わり準備を進めてきました。
 光島さんは2002年に京都を拠点とした、視覚に障害のある人とない人が言葉で鑑賞するグループ「ミュージアム・アクセス・ビュー」を立ち上げ、これまで長年にわたって対話による鑑賞を続けてきました。こうした経験から対話鑑賞が完全なオンライン環境でも成立するのか、またそのためにはどのような方法が効果的か検証してみたいと考えました。
 参加者は光島さんによる概要説明に続いて、視覚に障害のある人2名と晴眼者3名の5名1チーム、計3チームに分かれ、チームごとにZoomのブレイクアウトルームで2点の作品を50分間鑑賞した後、再び全員が集まり作品鑑賞についての感想と、オンライン鑑賞についての意見を交わしました。全体で2時間のプログラムでした。
 比較検討が可能なように3チームとも同じ作品を鑑賞しました。1作品目は見えない人、もう1作品は見える人それぞれ1名がファシリテータ(進行役)を担いました。ファシリテーターとなった人は、みなこれまで美術館での見えない人と見える人による対話鑑賞の経験のある人でした。その経験が生かされ参加者のほほ全員がオンラインによる対話鑑賞は初めてでしたが、どのグループもスムーズな鑑賞ができたようです。参加者の感想や意見をいくつかご紹介します。
・移動や天気に煩わされることがなく、どこからでも参加でき、座ったまま、お茶を飲みながら長時間の鑑賞が可能なことは魅力的だと思う。
・オンライン鑑賞がもう少し寂しいものと思っていたが、実際には絵のイメージに集中でき、この方法も1つの鑑賞スタイルだと感じた。
・オンラインでは作品間の行き来がクリックひとつで自由に行え、拡大縮小も思いのままにできることはリアルにない可能性だ。
・オンラインとリアルでの鑑賞を比べると、オンラインでは作品の大きさや質感、額縁の感じや周りの作品といった情報がないという環境下で鑑賞することになるのだなということを改めて実感した。(このことはデメリットにもメリットにもなることもわかった)
 このようにオンラインの可能性が明らかになる一方、オンラインを経験したことで改めて実際の美術館での鑑賞の魅力を再発見することにもなりました。従来の鑑賞スタイルにオンラインが加わることで、より充実した鑑賞体験を多くの人が共有できることが明らかになった収穫の多い鑑賞会となりました。(レポート:太田好泰)

【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!
△オンライン鑑賞時のZoom画面
(写真内の作品のクレジット)
松川朋奈 ≪でもこれでようやく、私らしくいられるのかなと思ったりもする≫(2016年)
写真提供:森美術館


プログラム2:高知×徳島「センサリーフレンドリーという視点から行うオンライン美術館訪問」

チームのメンバー:
竹内利夫(徳島県立近代美術館、フェーズ1勉強会メンバー)
亀井幸子(同上)
高橋秀俊(高知大学医学部・発達障害の研究者、フェーズ1勉強会メンバー)
橋口亜希子(前日本発達障害ネットワーク事務局長、フェーズ2協働者)
綿貫愛子(東京都自閉症協会、発達障害当事者、フェーズ2協働者)
梅田亜由美(アクセスアート・オンライン事務局プログラムコーディネーター)
原衛典子(同上テクニカルサポート)
平澤咲(同上テクニカルサポート)

 発達障害の中で、特に音や光などの刺激に敏感な人に向けた取り組みは、欧米などで広がっており「Sensory Friendly(センサリーフレンドリー/感覚にやさしいという意味)」と表現されています。日本でも映画館等で取り組みが始まっていますが、文化施設における事例はほとんどないというのが現状です。実際の施設利用であれば照明や音量を抑えるなどの工夫が考えられますが、「オンライン」という条件では何が求められ、何ができるのか?全くの手探りから始まりました。そして協働者の橋口さん、綿貫さんからお聞きする体験談、当事者の困りごとをヒントに議論を重ね、たどりついたのは「これから来館する人に向けて、美術館の様子がわかる動画や静止画を作る(オンラインで美術館訪問)」というものでした。
来る3月21日に開催するZoomウェビナーでの報告会では、制作した「スライドツアー」(静止画)、「ビデオめぐり」(動画)などのハイライトをご紹介するとともに、ここに至るまでの試行錯誤について詳しくお伝えします。実はこれで完成ではなく、まだまだ発展途上の取り組み、ぜひ今後への応援を兼ねて報告会にご参加いただければうれしく思います。(レポート:梅田亜由美)

【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!
△「スライドツアー」(静止画)より

【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!
△「ビデオめぐり」(動画)の「2階ロビー、くつろぎコーナー」より


プログラム3:茨城「高齢施設における作品鑑賞会と、鑑賞会のオンライン見学」

 このグループは、コロナ禍の逆境を転じて、オンラインによる鑑賞や交流の機会をつくり、近い将来、ミュージアムと鑑賞の機会を増やすことができたらいいな、そんな願いから構成されました。最終的に、水戸芸術館現代美術ギャラリーと、水戸市内にある高齢者施設もみじ館の利用者およびスタッフと鑑賞会を実施しました。

日時:2021年2月5日(木)14:00-15:00
会場:社会福祉法人北養会 特別養護老人ホームもみじ館+オンライン
参加者:もみじ館の利用者7名と職員2名
鑑賞会のファシリテーター:森山純子、佐藤麻衣子(水戸芸術館現代美術センター、フェーズ1勉強会メンバー)
見学(現地):障害者福祉施設ユーアイファクトリー職員3名
見学(オンライン):アクセスアート・オンライン事務局3名(宮城/埼玉/東京)
運営協力:いばふく(茨城から福祉で元気にするプロジェクト)

 2020年12月中旬に詳細な計画をすすめた時点では、緊急事態宣言下であり、水戸芸術館関係者が高齢者施設を訪問することは難しいだろうと予想していました。しかし実施前の2月、高齢者施設からの希望により、施設で対面して鑑賞会を開くことになりました。理由のひとつは、デイサービス利用者の活動の機会が極端に減っているため、可能な限り対面で行い、鑑賞の刺激や楽しさを現場でつくりたいというものでした。そのため、当初のオンラインを通じた鑑賞ではありませんが、遠隔地にいる見学者に対して「オンライン」で鑑賞会を公開する、という目的に変更して実施しました。
 水戸芸術館は、地域に根差した教育普及プログラムを実施しています。ファシリテーターを担当した現代美術センターの森山さんと佐藤さんは、今回の鑑賞会に際し、障害者福祉施設ユーアイファクトリーの作品をお借りしました。そのねらい、またその作品であることにより、どのような鑑賞の醍醐味が生まれたのでしょうか。
 また、いばふく(茨城から福祉で元気にするプロジェクト)のご協力により、オンライン会議システムZoomを通じて、宮城・埼玉 ・東京から3人の見学者が高齢者施設をバーチャル訪問、見学しました。その際、利用者とスタッフが座る円卓の真ん中に別添えのマイクを設置したことで、見学者は何を発見し、どんな可能性を感じたのでしょうか。また、Zoomの録画映像やチャットのなかに残るさまざまな記録は、参加した文化芸術・福祉などの多様なメンバーにどんな視点を残したでしょうか。
 3月21日の報告会では、この舞台裏をお話し、コロナ禍でミュージアムができることの可能性に触れながら、オンライン見学会による私たちの発見についてお話しできたら幸いです。(レポート:柴崎由美子)

【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!
△高齢者施設もみじ館にて円卓を囲んで鑑賞会

【報告】アクセスアート・オンライン試行事業の一部を紹介!
△作品を通じて、参加者が書き出す言葉とは


公益財団法人パブリックリソース財団コロナ給付金寄付プロジェクト「福祉・教育・子ども分野助成基金」