形や輪郭、イメージをさわる
―立体コピー・タッチプリント・点図
形や輪郭をさわって伝える手段として、立体コピーやタッチプリント、点図などがある。これは立体作品に限らず、平面作品も表現することができる。
1 立体コピー
立体コピーは、作品(平面作品や写真など)をカプセルペーパーという専用の紙に白黒コピーし、それを立体コピー機にかけると、その黒い部分が熱を帯びて発泡することで浮き出すもの。小さい点や細い線などは、さわってわかるほどには浮き出ないこともあり、作品の通りには作成できない場合もある。
2 タッチプリント
タッチプリントとは、透明な特殊インクを使用した立体(盛り上げ)印刷のこと。透明のインクを使用するため、下に印刷される文字や図柄の上に直接点字を印刷することができ、レイアウトの制限を受けたり、印刷物のデザインに影響を与えない。点字に限らず、図形や絵柄を型どった盛り上げ印刷も可能で、見えない人と見える人が共有することができる印刷技術である。美術館の収蔵品カタログをタッチプリントで作成している美術館もある(「視覚障害者の美術館・博物館利用に関するアンケート調査」参照)。
3 点図
点図は、点線や点のパターンによって表す図のこと。図の構成要素は基本的には点のみなので、立体コピーとは違い、実線を表現したい場合も、点線で表現することになる。点図の作成は、コンピュータソフト1)を用いると、コンピュータ上で図を作成でき、点字プリンタで点字用紙に打ち出すことができる。
4 レーズライター
美術鑑賞にはほとんど取り入れられてはいないが、もう一つの方法としてレーズライターというものがある。レーズライターとは、弾力性に富む下敷きの上に敷いて、インクのないボールペンで図形や文字を描くと描いたところが浮き上がってくるビニール製の特殊な作図用紙である。盲学校では図形や文字をさわるときに使われる必須アイテム。その場で形など描きながら伝えることができ、またカタログの図版の上からなぞることもできるため、鑑賞ツールとして、またコミュニケーションツールの一つとして、非常に可能性はあると思う。
いずれも作品の情報をそのまま再現するのではなく、特徴的な線や形を選んでデフォルメするなど、いかにさわってわかりやすくするかというコツやセンスが必要である。ある程度の経験や知識も必要となるので、最初から質を求めるのではなく、実際に視覚に障害のある人と一緒に作成していくことが大切。
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