今年は「画材の部」「展覧会支援の部」「小さなアトリエ支援の部」に対し、合計78件のご応募をいただきました。
10月7日(水)に実施した選考会の結果、下記の個人・団体の方に対して画材の贈呈と展覧会実施支援、アトリエ活動資金提供を決定いたしました。
(1)「画材支援の部」
■マツダ賞
木下将之将軍さん(神奈川県茅ヶ崎市)
山田直哉さん(神奈川県茅ヶ崎市)
■ターナー色彩賞
【個人】
大内田明さん(福岡県福岡市)
尾崎聡彦さん(福岡県福岡市)
【団体】
特定非営利活動法人 障害者アート支援工房ココペリ(富山県富山市)
地域交流育成福祉活動支援 おひさまの村ハートアート工房(青森県青森市)
(2)「展覧会支援の部」
溝上強さん(長崎県佐世保市)
展覧会期間 2015年12月21日(月) 〜 26日(土)(6日間)
ガレリア・グラフィカbis
(3)「小さなアトリエ支援の部」
あーとらんどくらぶ(宮城県仙台市)
NPO法人アール・ド・ヴィーヴル(神奈川県小田原市)
※本部門は、フェリシモ基金事務局[UNICOLART基金]の支援によって、今年より新たに開設されました。
[UNICOLART基金]は、障がいのあるアーティストの作品をデザインに使用した「UNICOLART」ブランドの商品購入と共に寄付される基金を生かし、
障害のある人の可能性を社会に発信するプロジェクトです。
基金を通じて、小さなアトリエネットワークをつくり、表現活動の活性化や次世代アーティストの育成につなげます。
「UNICOLART」秋冬新作デビュー!詳細はコチラ
【第17回 エイブル・アート・アワード選考会について】
◆開催日時:2015年10月7日(水)14:00〜18:00
◆選考委員(50音順)
小林敬生さん(版画家/ 多摩美術大学名誉教授)
佐藤直子さん(横浜市民ギャラリーあざみ野学芸員)
中津川浩章さん(美術家)
真住貴子さん(国立新美術館学芸員)
◆協賛・寄付団体関係者(50音順)
花王ハートポケット倶楽部・運営委員:増田光晴さん,鹿島進さん
花王株式会社:菊池さわ子さん,中山杏子さん
富士ゼロックス端数倶楽部:村井和昌さん
株式会社フェリシモ UNICOLART基金:芦田晃人さん
◆立会者
NPO法人エイブル・アート・ジャパン事務局:柴崎由美子,中谷由美子,疋田祥世
ボランティア:田中唯子さん
◆選考評
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「選考所感」
はじめてエイブル・アート・アワードの選考に出席する事になった時、意識したのは“障害のある人”という事を念頭に置かない、という事であった。
「芸術作品は作品世界が全てであって、障害云々は関係ない」と私は考えているからである。
銀座の一等地、ガレリア・グラフィカでの個展、それに相応しい作品を選ぶ……。
作品のレベルは当然として、他に類を見ない魅力を持った作品世界が要求される。
はじめ気になる作品があったが、「何年か前に選ばれた作品に似ている」という指摘があって推薦を断念した。
結果、溝上強さんの作品を推した。全てではない。《ようこそパンダのモンスターツアーへ》という作品シリーズと《妖怪掛け軸》に惹かれた。
立体造形も手がけているという事であれば、是非とも立体作品に描画してほしい。
いずれにしても世俗のありようなど全く意識することなくただひたすら自分のイメージを描く…その“ひたすら”が胸を打つ。
他に阿部鉄平さんと谷村虎之介さんに注目した。2人共に自分の表現世界を確立した時すばらしい美術家として岐立しているであろう…と予感する。
小林敬生さん(版画家/ 多摩美術大学名誉教授)
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このたびは、17回目となる「エイブル・アート・アワード」の審査という貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
受賞者の溝上強さんの応募作はいずれも生のエネルギーに満ちており、今後さらなる深まりが期待できる作品群でした。
銀座のギャラリー空間では、これまで制作してきた数多くの作品をどのように構成していくのか、期待が膨らみます。
また、今回惜しくも選外となった応募者の作品にも優れたものがありました。
本間泉さんの描く、結果的に抽象に辿りついたであろう画面は、謎のかたちが見え隠れしつつも均整がとれていて、印象的でした。
焼きゴテと色鉛筆を駆使して板にカラフルな動物や鳥類を描く阿山隆之さんの作品は、木製の雨戸や天板を支持体にし、
独自の手法を用いて色彩や造形の楽しさを伝えてくれます。
そのほか、ユニークで不可思議な無数の生き物を描く岡田文さんや色彩のセンスが光るウルシマトモコさんなど、
ペン画の小品で光る作品があったことも最後に記しておきます。
佐藤直子さん(横浜市民ギャラリーあざみ野 学芸員)
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2015年のアワードは溝上強さんに決定しました。
溝上さんの動物を表現した作品はカラフルそしてユーモラスなフォルムを持ちつつどこか不気味な世界を感じさせます。
平面性に支えられた過剰な装飾性の表現、そこに溝上さんの生きる意志と希望が詰まっていると感じられました。
そのほかに気になったのは本間泉さんの作品、特にモノクロのドローイングです。
激しいペインティングの作品は写真のせいか細部がわかりにくくて少し残念でした。
小林孝至さんも毎回パワフルな作品ばかりで圧倒されます。ただ、あまりに作品が多様なためもっと絞りこむことが必要だと感じました。
谷村虎之介さんも魅力的な作品ばかりで様々な可能性を秘めていると感じました。まだ18歳ということもあって今後に期待します。
選考で感じたことは、作品のセレクトや写真のクオリティによってかなり違って見えてくることです。
自身の作品を自分で選ぶとどうしても客観性に欠けたセレクトになりがちです。
セレクトや撮影に施設のスタッフなど第三者の目線が入ることでその作家の個性やよいところがはっきりと見えてくることがあります。
障害がある方のアートも作品のクオリティだけでなくどのように見せるのかを考える時期に入ってきたとも言えます。
細かいことですが、このような積み重ねによっていつの日か障害者アートと健常者のアートという垣根が取り払われることになることを夢見ます。
またそうした中で今回サポートが薄くなりがちな施設に属さない作家に光が当たったことも喜ばしいことでした。
中津川浩章さん(美術作家・アートディレクター)
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初めて審査させていただきましたが、いろいろな作品を拝見できて楽しかったです。
ただ、写真で審査したせいかもしれませんが、みな個性的な作品なのに、期待していたよりはおとなしい作品が多かったように思います。
受賞候補がしぼられた時、阿山隆之さん、小林孝至さん、溝上強さんの3人の争いになりました。
ここまで来ると判断材料は作品の優劣ではなく、個展で展示をした時の見え方、効果という展覧会を作る側の視点の働き、
そうした面でバランスの良かった溝上さんが受賞されました。
真住貴子さん(国立新美術館学芸員)
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手足の不自由な子どもをキャンプに連れて行く活動支援を通じて知っている子どもたちにも、このような才能があるのかも・・・思いながらみさせていただきました。
選考させていただいた『小さなアトリエ支援』の応募作品からは、どのアトリエの取り組みにも創作する楽しさや熱意が溢れていて、みているこちらまで創りたくなってきました。
取り組みは実に多彩で、全国で熱心な取り組みがあることを肌で感じることができました。
今回選ばせていただいた「あーとらんどくらぶ」様の作品は、どれも身近なものに創意工夫を加えながら完成度高く、
これからも創作熱意溢れる作品に触れられることを楽しみにしています。
花王ハートポケット倶楽部
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選考させていただいた『小さなアトリエ支援』の応募作品は、どれも鮮烈で美しいことに驚き、感動しながら、選出には大いに悩みました。
今回選ばせていただいたNPO法人 アールドヴィーブル様は、活動規模や、発信においても子どもから大人まで幅広い年代層を巻き込んで工夫している点がふさわしい
と思いました。
選考では多く作品を通じて、伝統ある漆工芸の存続に向けた活動、折り紙づくりを通して障がいの壁のないユニバーサル社会の実現を目指した活動など、
多彩な活動が展開されていることを知りました。
今後も様々な世代や境遇の人々が参加できる活動が続き広がっていくことを願っています。
花王株式会社
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エイブル・アート・アワード選考会に参加させていただきました、株式会社フェリシモ UNICOLART基金担当の芦田です。
この度はUNICOLAT基金より、将来のアーティスト育成やアートを通じた交流を行う団体様を対象とした「小さなアトリエ支援の部」を新たに創設いただきました。
選考会は、専門家の方々を中心に長時間に渡ってさまざまな角度から議論がかわされ、慎重に進んでいきました。
展覧会支援の部への応募では個性豊かなアーティストからの応募が集まり、大きな可能性をあらためて感じました。
小さなアトリエ支援の部への応募団体様の多くは、志は高く活動をされているが資金的に十分でない方がおられ、そういった方々への支援へとつながること
をうれしく思います。
今後、小さなアトリエ支援の部での支援団体からその才能がさらにひらかれ、展覧会支援の部に応募されたアーティストのような方々が輩出されてきますと、
さらにアワードの意義が高まるのではと感じました。
この度は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。<
株式会社フェリシモ UNICOLART基金 芦田晃人さん
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障がいのある方のアート・・・とひとくくりで表せないくらい多様な表現の作品が応募されており、その表現の多様さに驚きました。
手先が不自由ななか、それを独自の絵画表現に昇華しているものや、細密で根気のいる手法を、労をいとわず一心に打ち込んだ様子が見られるものや、
題材の選び方、構成がユニークなものなど、障がいがあるがゆえに、アート性が高められている面もあり、それが「エイブル・アート」の魅力なんだなあと感じました。
私がいちばん印象に残ったのは、自閉症の方が描いた、旅の行程の作品。白い紙に、20泊21日の旅の行程が、黒い文字だけでびっしり描かれていて、
文字が重なり合うその幾何学的な造形が、とてもかっこよかったのです。これは、包装紙とかにしたらいいかもしれないと思いました。
「エイブル・アート・ジャパン」さんは、障がいのある方のアートをプロとしてひとりだちができるように支援する活動を行っていて、
今回の『エイブル・アート・アワード2015』の選出も、新しい作家の登竜門としての意味合いがあるようでした。
純粋に芸術として作家を目指す人もいるし、商業デザインとして、Tシャツのデザインにしたり、グッズにして収入を得る道もあり、支援の方法も様々でした。
実際、作品を鑑賞すると、障がいがあるのにがんばっている・・ということ健常者側の偏った認識を打ち砕くような、障がいがあるからおもしろくなっている、
障がいのありなしなど関係なしに心に迫ってくる、という作品ばかりで、アートが引き出す人間の可能性ってすごいなあと実感しました。