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【報告レポート】国立アートリサーチセンター(NCAR)主催 NCARシンポジウム003
【報告レポート】国立アートリサーチセンター(NCAR)主催 NCARシンポジウム003

「美術館のアクセシビリティ― 共生社会に向けて、対話のある“合理的配慮”とは?」
ショートレポート


9月23日(月・休)に、国立新美術館講堂にて国立アートリサーチセンター主催によるシンポジウム「美術館のアクセシビリティ― 共生社会に向けて、対話のある“合理的配慮”とは?」が開催されました。このシンポジウムは、今現在ホットな話題である「文化施設のアクセシビリティと合理的配慮」に注目したものです。誰もが美術館を利用しやすい場となるにはどのように「合理的配慮」を実現すればよいか。複数の視点を交えて共に語り合う場として開かれました。プログラム構成としては、3つのケーススタディ(事例紹介)とパネルディスカッションに加え、その間にはリフレクションと呼ばれる、来場者参加の意見交換の時間が設けられました。取り上げられた3つの事例の1つ、外出が難しい人々とのケーススタディとして、アーティストであり、みんミが企画したイベントでファシリテーターとしても活躍したカミジョウミカさんと、エイブル・アート・ジャパン代表の柴崎が登壇し、自身の体験と活動について紹介しました。

カミジョウさんと柴崎による事例紹介

【報告レポート】国立アートリサーチセンター(NCAR)主催 NCARシンポジウム003
提供:国立アートリサーチセンター(NCAR)

カミジョウさんは、19歳の時に病気で寝たきりになり、それ以来アート制作を続けています。作品を通じて夢や空想の世界を表現しており、それがカミジョウさんにとって「生きている証」でもあると語りました。作品制作は、完全介助の生活の中で彼女の自由を表す手段であり、描くことが生きることそのものであると強調しました。

そんなカミジョウさんにとって、美術館における合理的配慮については、改善すべき点があると指摘します。例えば、車椅子専用の駐車場。美術館に用意されている駐車場が狭く、時には介助者の足元が不安定な場所で車椅子に移乗する場面があること、美術館の入り口から遠いこと、そして、展示作品が車椅子の視点では見えにくい高い位置にあることなど、身体的制約に応じた対応が必要だと述べました。そして、外出が難しい人にとって、オンラインでの鑑賞体験が有意義であることを語り、アートに触れる機会を広げるオンラインプログラムの重要性を強調しました。

カミジョウさんのお話を受け、柴崎からは、エイブル・アート・ジャパンが取り組んでいる、障害のある人とミュージアムのアクセス向上を目指した「みんなでミュージアム(みんミ)」プロジェクトを紹介しました。このプロジェクトは、障害のある人が自由にミュージアムを利用できるよう、障害のある人とミュージアム側双方が学び合い、合理的配慮を実現するための取り組みです。

そのなかでも、「みんミ」が重視しているのは、障害当事者自身がファシリテーターとして活動に参加すること。例えば、カミジョウさんが横浜トリエンナーレでのオンライン鑑賞会のファシリテーターを務めた際には、体調に合わせて会議時間を調整し、トイレ休憩や薬の時間を確保するなどが「当たり前のこと」として行われました。結果として、障害当事者自身がアート活動に積極的に参加できる環境が整えられたといいます。

ふたりの報告から、美術館のアクセスを改善するだけでなく、オンラインプログラムなどを通じて美術館に行かなくてもアートを楽しむ機会を広げることの重要性が確認されました。さらに、オンラインでのアート鑑賞が新たなアートとの出会いを生み、外出が難しい人々にもアートに触れる喜びを提供できることを、シンポジウム参加者と共有されました。

ボランティアが運営に協力

今回のシンポジウムには、障害のある人も数名参加しました。そのため、エイブル・アート・ジャパンから6名のボランティアが運営に協力し、さまざまな障害や特性のある来場者が安心して参加できるよう、みんミスタッフと連携しながら、会場内での案内やサポート、見守りなどのアクセシビリティ支援を行いました。

ボランティアは、主にみんミのミュージアム・アクセス・パートナー**登録者にお願いしました。事前研修では、全体の顔合わせ、シンポジウムの趣旨や当日の役割、配慮が必要な来場者の特性について共有しました。また、安心して参加いただけるよう、会場となる国立新美術館の設備や障害別の対応ポイントも確認し、当日に備えました。


ボランティアスタッフは開場前に集合し、国立新美術館の設備や来場者の導線、カームダウンスペースの設置場所などの最終確認を行い、開場後はスムーズに来場者を席まで案内しました。また、来館者がグループとなって行うリフレクションでも、文字情報支援が必要な参加者のグループのなかに入りサポートしました。シンポジウム全体を通じて、手話ユーザーと聴者のコミュニケーションを手助けしたり、文字による情報保障が必要な方にUDトークの案内をしたり、座席を変更したりと、ボランティアスタッフは臨機応変に対応。手話や英語対応、筆談など、各スタッフが持つ特技を活かして、参加者が心地よく過ごせる空間をつくりあげました。


終了後も、運営全体に対してもボランティアスタッフならではの気づきを多く提供いただきました。これらは今後のみんミの取り組みにも活かしていきたいと考えています。

【報告レポート】国立アートリサーチセンター(NCAR)主催 NCARシンポジウム003

シンポジウム当日の模様は、後日、国立アートリサーチセンターのウェブサイト(https://ncar.artmuseums.go.jp/)にて記録した動画を公開する予定とのことです。 当日参加できなかった方も、ぜひご視聴ください!


*カミジョウさんがファシリテーターとして活躍した第8回横浜トリエンナーレのアクセスプログラム「オンラインで楽しむ妄想モクモク鑑賞会」のレポートは、みんミウェブサイトにて公開中です。こちらも合わせてお楽しみください。
>> 詳細はこちら


**ミュージアム・アクセス・パートナーとは、障害のある人や支援者からの相談内容に基づき、一緒に展示を見たり、ショップやカフェを利用したりなど、ミュージアム体験をともにつくる人の総称です。みんミで絶賛活躍中&募集中!詳細は、みんミ公式ウェブサイトにて。
>> 詳細はこちら


レポート:みんなでミュージアム事務局スタッフ